加計呂麻島の黒糖づくり 「西田製糖工場」

2013年03月12日 | 関連する集落:佐知克
奄美は、ただいまサタづくり(黒糖の製糖)のシーズン真っ盛り。

この時期になると
店頭に「新糖あります」という張り紙が出るのが楽しみですよね。

現在、瀬戸内町内で販売用の黒糖を作っているのは6つの製糖工場。
ほかにも個人用に製糖しているかたもいらっしゃいます。

そのなかのひとつ、
加計呂麻島の佐知克(さちゆき)集落にある西田製糖工場
黒糖ができるまでを見てきました。



第6回の島案内人育成講座(瀬戸内町役場まちづくり観光課主催)に同行しての見学です。

製糖を知らせる、工場の煙突からの湯気。
この日は南風が吹いていて、湿度が高かったようで湯気もすごい!


奥さんの西田和子さんに案内していただき、
黒糖づくりの順番を教えていただきます。


基本的な流れは以下の順番。

① 刈り取り・運搬

  ・サトウキビを刈り取り、工場まで運搬 

② 圧搾 

  ・サトウキビを圧搾機にかけ、糖汁を搾る

③ 釜炊き (一番釜~三番釜)

  ・3つの釜で糖汁を煮詰める

④ 撹拌

  ・濃縮された糖汁を撹拌しながら冷却

⑤ 成形・袋詰め

  ・一口サイズに成形後、袋詰め



工場の目の前には、山と積まれたサトウキビが。
植え付けから1年~1年半かけて収穫されます。

こちらでは、自社の畑からと約20軒の農家からのサトウキビで製糖。
もちろんすべて加計呂麻島産で、
栽培指導などをしながら糖度の高い良質のものを手に入れてます。


まずはどんどんサトウキビを圧搾機にかけて、糖汁と搾りカス(バガス)に分けていきます。
バガスは、そのまま燃料や肥料として利用。


次に搾られた糖汁を、一番釜から三番釜まで3つの釜で煮詰めていきます。

美味しい黒糖を作るために、
一番釜では、とにかく丁寧にアクを取り除くことが大事。

石灰を入れアクを浮かせやすくし、
いろいろな不純物とともに除去していきます。
これは、葉ものなどの野菜をアクを取るために
重曹を入れるのと同じ作用だそう。なるほど。


アクを取り、どんどん煮詰め、二番釜から三番釜に移された頃には、
さらさらした黄緑色のサトウキビジュースが褐色の飴状になっています。



和子さんが道具に固まってついている黒糖を味見させてくれました!
こういうのが美味しいんですよね~。 



三番釜では、焦がさないようにかき混ぜて煮詰めてを繰り返し、糖度と固さを調整。
糖度計も使うんですが、やはり職人さんたちは最終的に舌で固さと糖度を確かめます。



三番釜で煮詰められた糖汁を、ここぞという瞬間で撹拌器に移します。
ご主人の西田寛次さんの厳しい目が。



撹拌器では、空気を含ませ冷やしながら固さを決めていきます。



撹拌器から取り出し、急いで作業台へ!
見た目も柔らかさ程度も、この時点ではお味噌よりちょっと固いような感じでしょうか。



運ばれた黒糖は、いっせいに素早くカットしていきます。
固まると割れてしまうので切れなくなります。スピードが命。



みるみるうちに、ひと口大のころころとしたかわいい黒糖に。



袋詰めされて、全国へと旅立ちます。
東京用とかパッケージがいろいろあるのが面白いです。



ご主人の西田寛次さん。


佐知克集落は土質がよく、サトウキビづくりが盛ん。

この工場は、昭和36年頃まで集落が組合として協同で利用していました。

その後、瀬戸内町に大型製糖工場ができたため、集落の組合は解散。
しかし、その大型製糖工場も7年ほどで閉鎖したため、
昭和47年から西田さんが個人で黒糖づくりを始めました。


  * 


途中、併設されている「きび酢」工場も見学し、味見。

「きび酢」は、サトウキビの搾り汁からできるお酢。
このタンクの中でじっくりと熟成しています。

サトウキビの汁を加熱し、水を加えてタンクに移すと、
加計呂麻島の空気中に浮遊する酵母菌や酢酸菌などの微生物の力で
自然と発酵してできる天然醸造酢。

黒糖が原料なので、酸っぱさの中にまろやかな甘みもあり、
ミネラル分などを豊富に含む健康食品。

昔は、サトウキビの搾り汁をもらってきて
家庭できび酢を作っていた人も多かったとか。

いまは瀬戸内町の特産品として、
「きび酢」だけでなく、ドレッシングやポン酢などの商品もありますよね。


  * * 


島案内人育成講座の受講生も、撹拌の作業を体験。
撹拌器がなかった頃は、もちろんこんなふうに人力で。
あっという間に固まってしまうので、ずっと回し続けるのが大変な作業。



いい感じになったら、広げてザクザクと切っていきます。



できたてほかほかの黒糖は、とびきりの美味しさ。
パクパクと手が止まらなくなります!



袋詰もみんなで。



最後に、和子さんに黒糖づくりについて質問など。

西田さんのところでは、黒糖やきび酢を販売してるので購入可能。

「観光に来た人たちが、付加価値を見つけてうちの黒糖を広めてくれたの」と和子さん。

昔は、おみやげとしての黒糖がなかなか売れず、
宇検村や遠く笠利町までも売りに行っていたそう。

 


シマの日常にかかせない黒糖。

昔は、集落にサタヤドリ(製糖小屋)がいくつもありましたが、
いまはその過程を見る機会はなかなかありません。

現在も、小さな製糖工場では、
昔とほとんど変わらない製法で黒糖をつくっています。

工場の一日の始まりは早く、
夜中2時ぐらいからサトウキビを搾る圧搾を開始。

その後、朝8時ぐらいから釜炊き、袋詰まで
一日16回ほど繰り返すそう。


黒糖ができるまでを実際に見てみると、
ほんとうに手間ひまがかかっていることが分かり、
いつも食べている黒糖が、何倍も美味しく感じられることうけあい。


昔ながらのサタづくりの風景、
この時期だけの島の楽しみです。
 




(問)西田製糖工場 0997-76-0177

※西田製糖の製糖は12月中旬~5月上旬ぐらいまで。
最盛期の1月下旬~3月末までが週2回、そのほかは週1回ほど。
見学したい場合は問合せして確認を。

きび酢工場は一年中見学可。






2013.2.28 瀬戸内町 加計呂麻島 佐知克 

S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会) 広報K

鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内