奄美の自然

奄美に生息する動植物・昆虫・野鳥や海洋生物をご紹介いたします。

南西諸島の成り立ち

南西諸島のトカラ列島以南は、東洋区という生物地理区に属すると言われてきた。
そしてトカラ列島北部から屋久島、種子島などは、日本本土と同じく旧北区と呼ばれる。

この境界が渡瀬線と呼ばれる生物境界である。
そして、大陸と陸橋でつながっていたこの数百万年の間に、南から生物が北上してきたと解説されてきた。
では、奄美大島や沖縄島に生息する動物は南方系の動物であろうか。

アマミノクロウサギの毛は柔らかくてふかふかしていて、とても南方系とは思えない。
確か30年くらい前には氷河期の生き残りムカシウサギ科の遺残種とうたわれていた。

オットンガエルやイシカワガエルは、その仲間が世界に見当たらない。
ハブの属するProtobothrops属もアジアの東側に分布するグループである。

南西諸島はこの数百万年の間に今の形になった。
この時代は地球の気温が少しずつ下がっていた時期である。
2000万年前にはベーリング海を渡って新大陸に移住したハブの仲間たちもいたが、現在のアジアの極東に生息するハブの近縁種はマムシである。 多くの生物が気温の低下に追われて滅びたり南下したりしていたであろう時期に、南西諸島を南方系の種が島伝いに北上してきたとは考えにくい。

フィリピン海プレートの沈み込みにより太平洋の海底にたまった泥が海面上に押し上げられて琉球列島のもととなった。 沖縄トラフが拡大を始める前の時期になるので大陸に近い位置であったはずである。
アマミノクロウサギの近縁種化石が揚子江流域で発見されたり、
九州南部や南西諸島のカンアオイと類縁性があるカンアオイが揚子江流域にあることから考えても、
揚子江河口付近に奄美大島を含む中琉球の基礎は現れたと考えるべきであろう。

沖縄トラフの拡大により、そこで移り住んできた生物を乗せたまま南西諸島は今の位置に移動してきたことになる。
種子島のイシカワガエルの化石やその周辺に分布するカンアオイの特徴なども、
起源が揚子江の河口付近であったと考えれば納得できる。